ZoffのEC売上術 「店舗スタッフが楽しんで自走できる仕組み」
はじめに― 目標は「EC売上比率30%」
メガネブランド「Zoff(ゾフ)」を展開する株式会社インターメスティックは、「売上の30%をECでつくる」という高い目標を掲げています。一般的な小売業では、いまだに売上の約9割が店舗という企業も多いなか、この30%という数字は、単なる“販売チャネル拡大”を超えた、収益構造の最適化とブランド体験向上へのチャレンジでもあります。
Zoff マーケティングご担当の須田さんは、その狙いをこう語ります。
「ECの注文が増えることで、店舗の視力測定やレンズ加工といった高工数業務の負担が軽減され、 結果として収益性が高まる。だからこそ、本気で30%を狙いにいきたいんです」
そんなZoffが選んだパートナーが、私たちバニッシュ・スタンダードが提供する店舗スタッフDXサービス『STAFF START(スタッフスタート)』です。
この導入事例の記事では、「店舗スタッフが楽しんで自走できる仕組み」をキーワードに、ZoffがどのようにEC売上を伸ばし、組織全体を巻き込むことに成功したのかを紐解いていきます。
課題 ― 「やらされている投稿」から、成果が見えない悪循環へ
STAFF START導入前、Zoffでは類似サービスを活用し、店舗スタッフによるオンライン接客コンテンツの投稿にすでに取り組んでいました。しかし、そこには大きな壁がありました。
- 投稿による成果がスタッフに届かない
- 本部主導でレポートを作り、フォローしていたが限界があった
その結果、
- 「成果が見えないから、やめてしまう」スタッフが続出
- 「本部に“やらされている”だけ」というスタッフの感覚の強まり
- 投稿数も伸びず、「投稿しないスタッフ」が多い
状況でした。「現場スタッフが生き生きと輝かない限り、企業やブランドの成長はない」とZoffは考えていましたが、実態はその理想とギャップのある状態でした。

転機 ― 「スタッフが主役」の仕組みへの出会い
そんな中で出会ったのが、
「店舗スタッフが主役」という思想でつくられた『STAFF START』でした。
Zoffが導入を決めた主なポイントは、大きく3つです。
店舗スタッフが主役である設計思想
- サービスや機能が「現場が輝く」ことを前提に作られている
- オンラインでも、日々の接客力を最大限活かせる
成果が“自分ゴト化”しやすいUI/UX
- スタッフ1人ひとりがアプリ上で売上・PVなどの成果を瞬時に確認できる
- 「自分の投稿で、どれだけ売れたか」がダイレクトにわかる
3,000ブランド導入による豊富なナレッジ
- 「何かやりたい」と相談すると、必ずと言っていいほど他社のベストプラクティスが返ってくる安心感
「現場のスタッフがより輝けるサービスだと確信できた」と須田さんは振り返ります。
成果 ― 数値が証明する「スタッフ起点EC」のインパクト
STAFF START導入後、ZoffのECには明確な変化が表れました。前サービス利用時との比較で、以下のような成果が出ています。
- スタッフ投稿数:6倍
- スタッフ投稿経由の売上:2倍
- サイト滞在時間:4倍
- コンバージョンレート(CVR):3倍
- LTV:1.4倍(EC単体での比較)
ここまで数字が変わると想定していなかったというZoffですが、蓋を開けてみれば、「オンラインでも、スタッフの接客が購入の後押しになる」という確信を得る結果となりました。
そして、その根底にあるのは、「スタッフが楽しんで自走できる仕組み」です。

仕組み① ― 成果が“見える化”されるから、スタッフが楽しい
STAFF STARTでは、スタッフ1人ひとりがアプリ上で
- 自分の投稿のPV
- 投稿経由の売上
- 商品ごとの反応
などをリアルタイムで確認できます。
「今まで、何のためにやっているのか分からなかった。それが、『自分の投稿でお客様が反応している』『売上につながっている』と目に見えて分かるようになって、すごく嬉しい」
現場からは、圧倒的にポジティブな声が多いといいます。
数字がプレッシャーになるどころか、
- 「もっとやってみたい」
- 「次はこういう切り口で投稿してみよう」
といった前向きなチャレンジ精神が生まれています。
仕組み② ― 「量」から「質」へ。社内コンテストで自走を加速
ZoffはSTAFF START導入後、社外コンテスト「STAFF OF THE YEAR」への参加をきっかけに、社内でも投稿コンテストを実施しました。
STAFF OF THE YEARで生まれた“一体感”
「STAFF OF THE YEAR」は、全国約30万アカウントの中から、日本一のスタッフを決めるSTAFF STARTが主催するコンテストです。Zoffは導入初年度からこのコンテストに参加し、物販部門で決勝へ進出、準優勝となりました。ここでZoffは、店舗と本部が本気でひとつになれる体験を得ました。
- 朝礼、メール、社内チャットなどあらゆる手段で全社に周知
- 「日々がんばっている現場スタッフに、全員で応援投票しよう」と呼びかけ
- 応援数という“数字”を通じて、店舗と本部のコミュニケーションが活性化
「本部からの応援を通じて、非常に一体感を感じた」 とスーパーバイザーからも声が上がったそうです。
社内コンテストで「量→質」へ転換
さらにZoffは、STAFF OF THE YEARの熱量をそのままに、社内の投稿コンテストも企画しました。
ポイントは、評価軸です。
- 表彰対象は「たくさん投稿した人」ではなく、「4投稿あたりの売上平均が高い人」
- 月4投稿という、誰でも届くハードルに設定
- 「量をこなせないから…」と離脱しかけていたスタッフが復活
この取り組みにより、
- 約50%だった「スタッフ平均アクティブ率」が約80〜90%まで上昇(スタッフコンテンツの増加)
- スタッフコンテンツ経由の売上も過去平均比 約1.4倍と過去最高に
また、「STAFF OF THE YEAR」 や社内コンテストが終わった後も好調が継続したとのこと。
「インセンティブは決して大きくない。それを超える“やりがい”の方が、スタッフのモチベーションになっている」
金額以上に、「自分の力で売上をつくれている実感」が、自走の原動力になっているのです。
仕組み③ ― 「オンライン接客の意義」をトップ自ら伝える
Zoffが特別に複雑な仕掛けをしたわけではありません。むしろ、シンプルだけれど本質的なコミュニケーションを徹底しました。
- 「オンライン接客は、ECのため“だけ”の施策ではない」
- 「店舗のためでもあり、会社のためであり、なによりお客様のため」
- 「お客様にとっては、店舗で買ってもECで買っても、『Zoffでの体験』が良ければチャネルは関係ない」
こうしたメッセージを、
- スーパーバイザー会議
- 店長が集まる場
などで、須田さん自身が顔を合わせて説明しました。
「本部が勝手にやっている施策」ではなく、「店舗と一緒につくる、お客様の体験価値向上の取り組み」として認識され始めたことで、協力体制が一気に整っていきました。

店舗への波及効果 ― 働き方・キャリア・接客力が変わる
STAFF STARTによるオンライン接客の取り組みは、
EC売上だけでなく、リアル店舗にも良い変化をもたらしています。
1. 計画的な働き方へのシフト
- 投稿スケジュールを含めた稼働計画を店舗単位で組む文化が浸透
- 視力測定・レンズ加工など固定業務が多い中でも、「どうやって投稿時間を確保するか」を店舗が主体的に考えるように
2. 新しいキャリアパスの萌芽
- 店長・SVを目指す以外に、「オンラインで輝く社内インフルエンサー」のような役割が見えてきた
- 将来的には、スタッフコンテンツで成果を出す人材を制度面で評価する仕組みづくりも構想中
3. オフライン接客スキルの向上
オンライン接客では、写真のクオリティだけでなく
- 商品知識
- 着用のコツ(Tips)
- お客様視点のテキスト表現
が重要になります。その結果、
- 「どう伝えれば、お客様に伝わるか」
- 「どの情報が購入の後押しになるか」
といった思考が深まり、実店舗の接客トークにも良い影響が出ているといいます。
データ活用 ― 全店舗スタッフをマネジメントする
Zoffは、STAFF START上の店舗スタッフを「タレント事務所の所属タレント」のように把握・活用しています。
全スタッフを細かく“属性管理”
Zoffは全スタッフを以下のようにカテゴリ分けしています。
- 身長・服のサイズ
- 目の距離(寄り目/離れ目など)
- 顔型(丸顔・卵型・ベース型…)
- ファッションテイスト
- 撮影スキル(自撮り・他撮り・リール撮影ができるか)
- 得意な投稿タイプ(販促系/商品情報系 など)
- 得意な商品ジャンル
- カルチャー系の趣味・コラボとの親和性 など
これらの情報をもとに、本部ではマーケティングカレンダーに沿って「誰に」「どんなテーマで」投稿してもらうかを設計し、投稿依頼や企画の最適化を行っています。
さまざまなチャネルへの二次活用
スタッフコンテンツは、EC上だけで完結しません。様々なチャネルで二次活用をしています。
- メルマガにスタッフのスタイリングや着用例を掲載し、CTR向上や来店・閲覧の導線づくりに寄与
- Meta系広告(Instagram / Facebook)クリエイティブとして活用
- 顔型別おすすめチャートなど、お客様が選びやすくなるコンテンツとして展開
今後はさらに、
- スタッフコンテンツ接触有無によるLTV変化
- 「誰の」「どの投稿」がLTV向上に効いているか
といった分析を進め、成果を出している投稿・スタッフを横展開し、制度として評価していく構想です。
これからの展望① ― SNS×ファンマーケティングへ
Zoffは現在、SNSでつながるお客様に対する「ファン度」の可視化にも取り組んでいます。
- ブランドへの愛情・推奨意向・売上などを指標化
- 「ブランドに対してどこまで応援行動をしているか」をアンケートで測定
- 例)
- SNSでフォローする
- いいねを押す
- 自分からZoffの商品を投稿する…など
これにより、
- スタッフや店舗、ブランドへのファン度をスコア化
- スタッフ単位のファンコミュニティ形成
- ブランド全体のファンベース拡大
を、SNSを軸に進めていく計画です。
「私たちのメディアの中で、唯一インタラクティブにコミュニケーションできるのがSNS。
スタッフにファンをつけて双方向でコミュニケーションし、
やがて店舗やブランドのファンになっていただけるようなコミュニティをつくりたい」
これからの展望② ― オムニチャネル接客で「なぜ買わなかったか」も可視化
バニッシュ・スタンダードは、STAFF STARTを「オムニチャネル接客プラットフォーム」へ進化させています。2026年1月には、オムニチャネル顧客カルテ 機能がローンチされました。
オムニチャネル顧客カルテとは?
オムニチャネル顧客カルテを簡単に説明すると、
- 実店舗での購買データや接客記録(試着アイテムや会話)
- ECでの購買/閲覧/お気に入りデータ
といった顧客のオンライン・オフライン行動データを統合し、店舗スタッフが接客中にスマホで参照できるようにする仕組みです。
「このお客様は、普段こういうフレームをチェックしている」「最近ECでこのシリーズをよく見ている」「過去にこのスタッフの投稿をよく見ている」といった情報をもとに、AIが「この提案が刺さりやすいのでは?」「このシリーズをおすすめするとよい」といった接客アシストを行う世界観です。
須田さんが特に注目しているのは、「なぜ買わなかったのか」を科学できる可能性です。
「買ってくださったお客様のデータだけでなく、買わなかった行動も含めて可視化できるのは非常に魅力的。店舗でもオンラインでも、スタッフの力を最大限活用しながら、Zoffブランドの体験価値をもっと高めていけると期待しています」
まとめ ― 「スタッフが自走するEC」は、ブランドの未来を変える
Zoffの事例は、「EC売上を伸ばしたい」=「デジタル広告を増やす」という単純な発想から脱却し、
- 店舗スタッフという“人的資産”を最大限に活かす
- スタッフが楽しんで取り組める仕組みをつくる
- 現場と本部が同じ方向を見るコミュニケーションを整える
- データを活用して、スタッフを「タレント」として育成する
ことで、EC売上・LTV・組織の一体感・キャリアの多様性まで一気に変えていけることを示しています。「ZoffのEC売上術」とは、突き詰めれば、
スタッフを信じ、主役に据え、彼らが楽しんで自走できる“舞台”を用意すること
と言えるのかもしれません。そして、その舞台装置として機能しているのが、バニッシュ・スタンダードのSTAFF STARTです。
店舗スタッフの力をEC・SNS・オフライン接客のすべてで活かしたいと考えるブランドにとって、Zoffの取り組みは、これからのオムニチャネル時代の指針となるはずです。
取材ご協力

株式会社インターメスティック
マーケティング・制作本部 マーケティング戦略部
部長
須田悠太
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