「接客日本一」の称号をかけ、全国8.5万人のアパレル店員が競い合うコンテスト、STAFF OF THE YEAR(SOTY)。SOTYを主催する株式会社バニッシュ・スタンダードが目指すのは、販売員の地位向上であり、企業やブランドの垣根を超えて共に新たな接客のあり方を模索することで、業界の新たな未来を拓くことです。そんなSOTYの理念は大会の場を超えて、様々な形で広がっています。
2024年12月、リーバイ・ストラウス ジャパン株式会社は社内インフルエンサーや、スタースタッフの輩出に向けた活動の一環として、店長会の講師にSOTYで2年連続準グランプリを獲得した「ビームス 新宿店」のSUDOさんを招へい。その接客の極意を学びました。本記事では、店舗として高い売上を誇り、リーバイスのOMO戦略を現場でリードする梅田リンクス店 の宮本さん、SUDOさんによるトークセッションの様子をお届けします。
STAFF OF THE YEAR 2年連続準グランプリを掴んだ努力と戦略
リーバイス 宮本さん(以下、宮本さん):SOTYでのご活躍、本当におめでとうございます。2年連続準グランプリという輝かしい成果の裏側には、きっと様々な努力があったものと思います。まずはSOTYに向け、特に力を入れて取り組まれたことをお聞かせください。

ビームス SUDOさん(以下、SUDOさん):SOTY期間中は、とにかくスタイリング投稿の頻度を上げることに力を入れて、月に300件ほど投稿しました。しかし、量ばかりを追い求めて、これまで応援いただいてきたお客様をがっかりさせてしまっては、意味がありません。そのため、質の維持には徹底的にこだわりました。
普段から撮影はほとんど自分一人で、三脚に一眼レフをセットし、接続したスマホで画面を確認しながら行っています。投稿数を増やしてもクオリティが下がらないように、画角など細かい部分までチェックしながら撮影するようにしましたね。
また、ビームスでは毎日18時半にメルマガ配信があるのですが、ECチームと連携して配信内容を把握することで、メルマガと連動したスタイリングを投稿するように心がけていました。
宮本さん:なるほど。投稿の質だけではなくて、タイミングにも工夫を凝らされていたんですね。参考になります。他にも意識的に取り組まれたことはありますか?SUDOさん:期間中は毎日、店舗オープン前の1時間をロールプレイングの時間に充てていました。接客のトレーニングでよくあるのは、商品知識をインプットして上手に話す練習です。もちろん、商品知識は大切です。でも、お客様の望みに沿わない提案は意味がありません。そこで私は、お客様の潜在的なニーズを引き出す会話を身に着ける練習に時間を費やしました。「お客様は本当は何を考えているのだろうか」と常に考え、様々な角度からお客様の気持ちを丁寧に聞き出すことを意識しました。この練習で磨いたテクニックは、日々の接客でも非常に役立っています。

宮本さん:地道な練習を重ねて、スキルを磨かれたのですね。SOTY出場にあたっては、会社や店舗のバックアップもあったのでしょうか?
SUDOさん:はい、会社のバックアップは非常に大きかったです。特に、SOTY期間中のシフトを全て自分で決めて良いと言っていただいたことは、本当に助かりました。自由にスケジュールを組めたことで、SOTYに全力で取り組むことができました。
また、期間中は接客時にも積極的にSOTYについてお声がけし、投票をお願いするなど、多くのお客様にご協力いただきました。その際、私自身が発信するだけでなく、店長が店舗スタッフ全体にアナウンスしてくれたりと、協力体制を築いていただけたのは本当にありがたかったです。その結果、たくさんのお客様が温かく応援してくださり、実際に商品を購入していただくことも多かったです。
スタイリング投稿で顧客との接点を最大化
宮本さん:SUDOさんの普段の業務において、リアルとオンラインの接客はどのような割合ですか?
SUDOさん:オンラインでのスタイリング投稿を7年間続けていることもあり、オンラインでの活動が多いと思われがちなのですが、実は投稿を始めたきっかけは「店舗で接客するときのツール」としてリアルな接客に活かせるのではないかと考えたからなんです。
なので基本的には「リアル接客」に重きを置いています。実際に店頭に立つ時間も長いですし、6シーズン連続で全社でリアルの売上ランキングの上位に入るほど、リアル店舗での売り上げにもこだわっています。
その上で、1日の中で午前と午後の2回、それぞれ1時間ほどをオンラインの撮影や投稿に充てています。大体5分ぐらいでコーディネートを組んで、15分くらいで撮影して、というのを1時間で3~4スタイルほど撮りためて、随時投稿しています。スタイリング以外の動画撮影も、この時間でやっています。

宮本さん:店舗の売り上げでも上位だとは驚きました。リアルでの接客に軸足を置きながら、効率よくオンラインでの作業もこなされているんですね。オンラインでの発信で工夫していることはありますか?
SUDOさん:一番工夫しているのは、ずばり商品選定です。 必ずECサイトの売り上げランキングを確認して、そのページに自分が掲載されている状態をつくることを意識しています。
また、新着アイテムは他の店舗スタッフがあまり投稿できていないことも多いので、いち早くコーディネートを投稿するように心がけています。 そうすることで注目を集めやすく、お客様に参考にしていただける確率が上がると感じていますね。
ただし、アイテムには好き嫌いや似合う・似合わないもあります。 売上だけを追いかけて、しっくりこない商品をピックアップしても、それはお客様にも伝わってしまうと思うので、自分の個性を大切にして発信していくことも心がけているポイントです。
宮本さん:売れ筋の商品を意識しながらも、自分らしさも大切にされているのですね。確かにスタッフによっても似合うアイテム、似合わないアイテムがあり、どういった商品を選ぶかは悩んでいたポイントだったので、とても参考になりました。他に工夫していることはありますか?
SUDOさん:スタイリング投稿を、オンラインだけで完結させず、リアル接客でも効果的に活用しています。店頭でお客様にスタイリングページを見せることはもちろんですが、退店後にも見ていただけるように工夫しています。
例えば、接客をしているとお客様から「やっぱり少し考えます」と言われることもありますよね。そのような方には名刺ではなくて、オンラインページをQRコード化してお渡ししています。「今日、この商品のスタイリングを投稿するので見てください」と伝えることで、帰宅後にもう一度接点をつくっています。

そして、「もう一度、会いたい、相談したい」と思ってくれたお客様には、再度、お店に来店いただけるように、Instagramに店舗の出勤日を公開しています。自分のスタイリングページからリンクしているので、フォローしてくれたお客様が来店・再来店に繋がるケースも多いですね。
次世代のスタースタッフ育成を目指して
宮本さん:社内では「オムニスタイルコンサルタント(OSC)」としてもご活躍されています。具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか?
SUDOさん:そもそもOSCが発足したのは、コロナ禍の緊急事態宣言下で店舗営業ができなくなったことがきっかけでした。EC強化を目指して、始めはオンライン発信が得意なスタッフ10人が選ばれたのですが、現在は「オムニスタイル課」として一つの部署に整備されました。所属しているのは、リアルとデジタルの両面で活躍できるスペシャリストとして選出されたおよそ20人。私もその一人として活動しています。
実際の業務は、週に1回、本社のあるオフィスに出社し、様々なチャネルでの接客や投稿を行うほか、全社にオンライン接客を浸透させるというミッションのもと、他の店舗とミーティングをしてアドバイスや分析を行ったりしています。出張で実際に他店舗を回ることもありますね。
宮本さん:コンサルタントの名の通り、様々な店舗の相談役として幅広い活動をされているんですね。

SUDOさん:OSCが目指すのは、オンライン接客に挑戦したいというスタッフにとっての学びの場となり、多くのファンに愛される「スタースタッフ」を輩出することです。私もその一員として貢献しながら、自分自身もスタースタッフと呼ばれる存在になりたいと思っています。
宮本さん:最後にOSCとして、そして販売スタッフとして、今後どんな取り組みをしていきたいですか?
SUDOさん:販売の現場に立ち続けたいという思いは当然ありますが、それ以上に「接客」の素晴らしさを多くの人に伝えたいという強い思いがあります。
しかし、現状の接客は個々人の経験や感覚に頼る部分が多く、体系化されていないのが課題です。将来は、接客を専門で教えるポジションに就いてナレッジを共有しながら、後進の育成に携わりたいと考えています。接客の素晴らしさを多くの人に伝え、業界全体のレベルアップにも繋げていきたいですね。
宮本さん:今後もSUDOさんの活躍が楽しみです。今日はありがとうございました。
取材ご協力
SUDOさん
BEAMS ビームス新宿店 販売スタッフ
オムニスタイルコンサルタント
1993年2月20日生まれ、東京都出身。織田ファッション専門学校ファッションビジネス科を卒業後、セレクトショップの販売員に。2014年から「ビーミング ライフストア バイ ビームス」イクスピアリ店に転職。2024年3月に現在の新宿店に異動。「スタッフ・オブ・ザ・イヤー2023/2024」で2年連続準グランプリを獲得。社内に20人ほどいる「オムニスタイルコンサルタント」の一人。
宮本さん
リーバイス 梅田リンクス店
